壁があると乗り越えたくなる(いや、脱獄したくなる)

白鳥由栄(しらとりよしえ)をご存じでしょうか。ってぼくは百田尚樹さんの本を読んで知りました。

白鳥は「昭和の脱獄王」として一世を風靡した人です。脱獄しておいて風靡というのはどうしたものかと思うかもしれませんが、その脱獄におけるあざやかな手口(人に怪我を負わせることはしていない)には息をのみます。

 

最初に服役したのは青森刑務所です。看守の目を盗んで針金を拾い、それを常に隠し持っていました。白鳥は独房の小窓から手を出せば鍵穴に手が届くことを確認し、風呂上りの皮膚がやわらかくなった指で鍵穴に押しつけて型を写したそうです。さらには独房だけでなく、裏門にも合うように合鍵を作り見事脱獄しました。そう、針金一本でやってのけたのです。

 

次は秋田刑務所。独房の天窓には鉄格子がはめられていましたがそこに目を付けました(鉄格子が少し腐っていた)。天窓なので高いところにあります。白鳥は壁の角に立って、手と足で踏ん張りよじ登りました。
ブリキ版や腐った釘から即席のノコギリを作り、夜中に行われる看守の交代時間の10分間を狙って毎日少しづつ天窓の鉄格子を切り続けました。※ノコギリは両手を使うので足だけで踏ん張って切っていたことになりますね、すごい力です。

 

そして網走刑務所。これだけの脱獄犯です、ついには手と足に常に手錠・足枷をかけられてしまいました。人間としての扱いもされません。しかしそこに闘志を燃やすのが白鳥。今度は監視口に目を付けます。(監視口と言ってももちろん鉄格子はあるし、監視用なのでその幅は狭い)
白鳥はその鉄格子を毎日根気よく揺らし続けます。味噌汁を吹きかけて腐食させて外したという話もあります。そして肩の関節を外し狭い小窓から脱出するのです。難攻不落の網走刑務所ではじめて非常ベルが鳴った瞬間でした。

 

最後が札幌刑務所。刑務所員としてもこれ以上のメンツを失うわけにはいきません。看守4人1組で24時間の厳重監視を行います。しかしこれが白鳥にさらなる火をつけます。
逃げ道として残されたのは地面しかありませんでした。白鳥は洗面用の桶の鉄タガを引きちぎり、取調室からドアの釘を抜き取ります。監視の目を欺きながらまたもやお手製のノコギリを作ってしまいます。そうやって地道に床板を切り、あとは食器で穴を掘り進め脱獄に成功します。

「人間が作ったものは、人間に壊せないわけがない」これが白鳥の哲学だそうです。

 

その後は府中刑務所に服役しましたが、そこでは普通の囚人と同じように扱われました。手錠もかけられていません。白鳥からしたらいつでも脱獄し放題になったわけです。しかしながらそこでは一度も脱獄せずに刑期を終えて仮出所しています。

乗り越えたいという壁がないのであれば、闘志もわかなかったのかもしれませんね。

 

 

壁にぶち当たったり、ライバルができたりすると、「乗り越えたい」「勝ちたい」と思うのが人の心理でしょうか。それをクリアしたときの何物にも代えられない達成感や、成長できたという実感、それを味わいたいが故に人は成長しようとするのかもしれません。

 闘志に火がともる目の前の「壁」。みなさんにはありますか?